近所の古い友人の母親が死んだ。二百メートル位しか離れていないのに、めったに電話もかかってこない、会うこともあまりない。十歳位からの付き合いで、一 つ年上で、なんだかんだと、私の事を気に掛けてくれて、もしものことがあったら、俺がやってやるから、心配するな。と、まで言ってくれた男だ。医者の息子 で、ほとんどヤクザのようになり、今も何をやってしのいでいるのかは聞かないでいる。その、男から電話がかかってきた。「奥田・・徳田・・だか・・お前 知ってるか?」「知らないよ・・」「そうか・・じゃあ・・いいけど・・」「なんだよ・・久しぶりだな・・」「ばばあが死んでよ・・」「え?」「ばばあが死 んだんだよ・・」・・飲んでいた缶ビールを持って家に行く。棺おけに入った、つい最近も会って挨拶をした、その、母親が、まるで生きているように化粧をし て目を閉じていた。「奥田とか徳田ってなんだ?」「近所で親切にしてくれた人の地図があって・・」見れば、細かく鉛筆で、地図が書いてあって、何かがあっ たときに、連絡してほしい人の家が書いてあった。黙って二人で酒を飲んで・・しばらくして、女房と息子も呼んで、四人で棺桶の前で、飲んだ・・そのうちに 酔っ払って・・じゃあ帰ろうと、もう一度、死んだ母親の顔を見ると涙が出る。88歳。三軒茶屋に来て六十年と言っていた。今も、電話の向こうで、「孝ちゃ ん・・」と心配そうに、私からの電話に気を揉んでいた声を思い出す。素敵なやさしい、品のある。大好きなお母さんがいなくなった・・。
2006 年 4 月 18 日 (火)
2013年3月7日
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