秘境

私の家を秘境だといった人がいる。昭和の名残のある借家だが、十年以上借りている。
次男はここで生まれている。夏はアシナガ蜂がやってきて、それを食べに、スズメバチがやってきて、巣を作ったりする。区に連絡すると、スズメバチも役に立ったりしますので、などとのんきに応えられたりするが、スズメバチに刺されたら死んじゃったりするので、ほってはおけない。びわの木には時々見なくなったカタツムリが来る。窓にはヤモリが張り付いている。裏の倉庫をたまに覗くと、猫が寝ていたりして、急に開けないでくれといった、迷惑そうな顔をされる。三年にいっぺんはねずみが出て駆除することになる。屋根の上をどたばたと駆け回る足音を聞いたことがあるが、もしかしたら、ハクビシンではないかと思っている。ハクビシンは今東京に千頭以上いるといわれている動物で、古い家の縁の下などで子育てもするということだ。妻は近所でハクビシンが歩いているのを見ている。ハクビシンはびわなどの果物が好物ということだ。というわけで、動物や植物に囲まれた家で、それで、まあ、秘境だ、などというやつがいるわけだ。人間の文明は動物や植物との戦いで進んできたわけで、その動物や植物が身近に感じられる生活は、東京に住んでいて、少し贅沢な気がしないでもないのだ。よく、田舎暮らしにあこがれる人がいるが、動物や植物との遭遇、対決は想像以上のものらしい。私の劇団のマネージャーだった男の実家は神奈川県の藤野だったが、サルやイノシシが頻繁に現れるような家だった。動物や植物との共存は生易しいものではないけれど、昭和の30年代の初め頃までは、三軒茶屋でも狐や狸、ふくろう、などもいたという。
作家の林芙美子は三軒茶屋に住んでいる頃、隣の神社でふくろうが鳴いて寂しいなどと書き残している。
というわけで、大掃除も終わり、テレビドラマの撮影も終わって、恒例のささやかな忘年会も終わり、今年も仕舞いです。この一年芝居も三本やって、大学の講師の仕事も始めて、少し環境が変わりました。1月より稽古を開始。まずは一人芝居からです。書いているものもあって、それは1月中にまとめようと思っております。それでは、よいお年をお迎えください。

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