好きだから

三軒茶屋に行きつけの、居酒屋がある。ともかく安い。4時から開店している。千円でお釣りが来る。ってな店だ。一人で行ったり、何人かで行ったり、子どもを連れて行ったり、串揚げが一本60円。安いのである。
その店で働いている、中国の子やベトナムの女の子とも顔見知りになった。日本語学校や大学に通っているということだ。「大変だなあ、日本で働いてるなんて・・」ちょっと、同情気味に言うと、事情通の友人が「彼女たちは向うでは、お金持ちのお嬢さんだと思いますよ、日本人なら、ニューヨークあたりの大学に留学しているというレベルです。日本でアルバイトしているのは、賃金のレベルが違うので、けっこういいんじゃないですか・・」
とのことだった。彼女たちとは、ときおり、会話を交わす。貰った、たらこをその店で開けて、従業員にも配ったなんてこともあった。そんなある日。ベトナムの女の子が、私に、ベトナムのコーヒーです。と言って、袋でくれた。
「ありがとう」と言ったが、なぜ私にくれたのか良くわからないので、「これ、なんで俺にくれるの?」と聞いた。
すると、ちょっとはにかんで「・・好きだから・・」と言ったのである。女の子に、いや、今までの人生で、面と向かって、好きだから・・と言われたのは、はじめてかもしれない。大体、日本の女は、男に、好きだという言葉は言わないのではないだろうか。好きだと言われれば、悪い気はもちろんしない。それからも、その店に行くが、その子はいつもと変わらず、私に、にこやかに、いらっしゃいませ。という。日本語はかなり達者だ。
友人に「あの子に、俺、好きだって言われたよ・・」と自慢すると「それ以上でも、以下でもない、そういう意味ですから、他に言葉が思いつかなかったということでしょう」と、たしなめられた。好きだから・・そんな言葉を、誰かに向かって言った覚えもないが・・好きだ、という言葉は案外に人を幸せにするものだという気がする。
さて、今回の「笑う犬」昨日、台本が完成した。好きだ、と言う言葉が、時々出てくる。大の大人が、好きだ嫌いだと言っている芝居だ。もしかしたら、好きだ嫌いだが、色々のことの、基準になっているのかもしれない、などと考えたりする。
大学の授業も始まった。生徒は1年生だから、18歳とか19歳。ついこの間まで高校生だった子たちだ。一緒に話したり、考えたりしていると、こっちの気分も活性化する。
稽古も、後一週間で、本格化。ユーチューブなどにも、稽古風景を載せることもあるかもしれません。初期の頃のレクラム舎のメンバーが久しぶりに顔をあわせます。初心にかえってのスタート。
7月に客演する芝居の準備も始まりました。
好きだから・・なんて、考えたこともない言葉。好きだから、やっている。そう考えると、乗り越えられる、色々なこともあるような気がします。

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